オフィスレイアウトをはじめよう。
変形H鋼は、十分な幅をもち、異様な長さに気づかなければ、ただの本棚に見えるだろう。
階段脇の本棚のみ、九メートルに及ぶ全長を一望のもとに確認できる。
リブ状に並ぶ垂直材のあいだに棚板を入れるという工夫は、たまに見かけるが、八本の本棚柱というシステムは、きわめて建築的であると同時に、建築の枠組みを揺るがしており興味深い。
建築的というのは、空間を構成する明快なルールを設定していること、細長い敷地や本が多いという与条件に即して、構造のレベルで提案しているからだ。
柱としての本棚を壁よりも少し突出させて、外観にわかりやすく表現することはしない。
むしろ、背板の裏の隙間に配線をおさめ、壁として断熱パネルを張りやすくすることを優先している。
すかんとシンプルで、組み立て簡単なスタイルは、みかん組らしい。
一方、建築というジャンルにゆさぶりを与えているのは、建築と家具が等価になるような考え方である。
建築に比べて、フラジャイルで可動のはずの家具が、実は固定された強度のある構造体になっているのだ。
しかも、目盛りのようにも見える本棚柱に、新しい床をはめこむこともできる。
だが、こうした建築と家具のヒエラルキーを崩していく態度も、みかん組ならでは。
施主が新居に引越しする際、一部のCDラックを除いて、家具をもってくる必要はほとんどなかったらしい。
本棚柱と本棚柱のあいだにも、自由に棚板を追加できる。
斜線制限が切り替わるところまでを大きな直方体のボリュームとし、本棚柱の高さをそろえていることで、空間全体が巨大なメタ本棚になっていることがより強く感じられるだろう。
ここまで本棚と書いてきたが、正確ではない。
書籍だけを入れるわけではないからだ。
本棚柱は一階の納戸や二階のトイレも貫通しており、均質なフレームが場所によって様々な偏差をつくり耐生活の風景を刻み込む。
実際、キッチンの近くは食器や小物入れになっていた。
また天井近くの空っぽの白い棚は、ドナルド・ジャッドのミニマル・アートを想起させる。
U原の家では、本棚柱というシステムと別のタイプの空間が、坪庭のまわりに広がっている。
ほどよいサイズの縁側や、意表をつく障子、離れの二階にある茶室的な和室。
これらは美術関係の仕事を営む、施主の妻の要望が反映されたものだという。
日本的なモチーフの空間は、この住宅にちょっとした変化を与えている。
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